スコープ販促創造研究所

買い物行動・意識定点調査【外の世界のリスクを「工夫」に変える生活者たち】ナフサ不足で見えた「買い物の知恵」の広がりと、これからの売り場に求められる「引き算の優しさ」

買い物行動・意識定点調査【外の世界のリスクを「工夫」に変える生活者たち】ナフサ不足で見えた「買い物の知恵」の広がりと、これからの売り場に求められる「引き算の優しさ」

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スコープ販促創造研究所では、20代から60代の男女500人を対象に買い物行動・意識に関するアンケート調査を半年ごとに実施しています。
今回は、定点調査している内容に加えた時事テーマとして「ナフサ不足に関連する意識調査」を実施。ナフサ不足の報道を前に、生活者がどのように “買い物の知恵” を発揮し始めているのかを、データから詳細に読み解きました。

米の「諦め」の次にやってきた、新しい物価高

半年前(2026年1月)のコラム(第6回Vol.1)では、高止まりする米価格に対し、生活者が産地やブランドへのこだわりを捨てることで、厳しい現実に静かに順応している姿を報告しました。店側が用意した古米やブレンド米といった安価な受け皿は、家計を支えるという意味では確かに機能したものの、生活者の心の底からの「満足」には直結しておらず、売り場に対する関心が薄れる「売り場スルー」という寂しい兆候を生み出していることにも触れました。

現在は、米の価格にようやく落ち着きが見え始め、生活者は一息つけるかと思いきや、間髪入れずにまた別の新しい物価高の波が食卓を脅かしています。

2026年2月から続く中東情勢の緊迫化。それに伴うプラスチックやインクの原料である「ナフサ」の供給不安と価格高騰による買い物環境の変化に対して、生活者はどのような心理で向き合っているのでしょうか。「<お買い物ワクワクモヤモヤ研究会トピックより>白黒ポテチとゴミ袋——ナフサ不足、生活者の実感マップ」でもナフサ不足に揺れる生活者のリアルな声を集めましたが、当社の最新の定点調査データから浮かび上がってきたのは、単に価格に怯えるだけでなく、外の世界のリスクを「暮らしの知恵」へと変換し、売り場に対して驚くほど冷静な「割り切り」を突きつけ始めた、生活者たちの新しい姿でした。

 

ニュースの裏にある「心の葛藤」と、家の中で始まった「小さな工夫」

まず、生活者がナフサ不足のニュースをどの程度、意識しているのかを見てみましょう。現在の買い物において、ナフサの供給や価格の動向を「非常に意識している」「ある程度意識している」と答えた人は、全体の36.2%にのぼります。 ニュースは見ているが意識していないという層(34.0%)を合わせると、実質的に7割以上の人がこの問題を認知している状態です。さらに、ニュースに接した人の多くが、「輸入に頼る資材が止まった場合の生活への影響(56.4%)」や「日本の食料自給率の低さ(45.9%)」に対して、日常生活の中で不安や関心を高めていることが分かります。

この高い数字の裏側にある生活者の「心の裏側」を覗くと、そこには「もう自分の努力だけでは逃げ場がない」という、ある種の追い詰められ感と無力感が隠されています。

かつての米の高騰時は、「買う銘柄を安いものに変える」という個人の買い方の選択で、なんとか負担をコントロールすることが可能でした。しかし、商品の容器やパッケージ、トイレットペーパーなどの日用品資材は、現代の暮らしにおいて代替が利かない「生活インフラ」そのものです。「これ以上、自分に何を削れというのか」という、個人のやりくりの限界を超えたところから襲ってくるリスクに対し、生活者は強いストレスを感じているのです。

自分ではどうにもできない巨大な国際リスクを前にしたとき、生活者の心にはあるスイッチが入ります。それは、「外の世界がどうあれ、せめて自分の手が届く家の中だけは、100%自分の知恵で完全にコントロールして見せる」という、健気で力強い防衛本能です。

そのコントロール欲求の表れこそが、今回の調査で新たに見えてきた「家の中での日用品の使い方」のデータです。物価高やプラスチックの高騰に伴い、日常生活の中で以下のような工夫を「(今回の値上げ等を機に)強く意識して行うようになった」、あるいは「以前から行っているが、最近より徹底するようになった」と答えた人の割合が、鮮明な数字となって現れました。

生活者全体から見れば、これらはまだ「1割半〜2割程度(約6人に1人)」が動き出した段階であり、数字としては決して大きくはありません。まさに「小さな変化の兆し」と言えます。

しかし、注目すべきはその中身です。米の時のように「ただ安いモノへ流れる(消極的な諦め)」のとは異なり、「手元にあるシートをハサミで切る」「ジッパー袋を洗って回す」といった、一見すると少し面倒に思えるような工夫に、自発的に着手している人がこれだけ存在しているのです。これは、生活者がただインフレに悲観するのをやめ、自分の生活を自分の知恵で前向きに守ろうとし始めた、「生活防衛の知恵」が次のステップへ進んだ確かなシグナルだと捉えることができます。

お惣菜売り場への直撃と、「見た目」に対する完全な割り切り

この、家庭内で芽生えつつあるシビアなプラスチック意識は、今、お店の「お惣菜・お弁当売り場」の棚へとそのまま直撃しています。

最近におけるスーパーやコンビニでの、惣菜や弁当類の購入頻度の変化を尋ねたところ、24.4%(約4人に1人)が「以前より減った・やや減った」と回答しました。その減ってしまった理由を複数回答で詳しく紐解くと、トップの「生活費の節約(25.4%)」や「中身の食材の価格高騰(33.6%)」に次いで、「プラスチック容器(トレー・弁当容器など)の値上がりにより、商品の価格が上がった(23.8%)」が明確な要因として上位にランクインしていることが分かりました。

家の中で保存袋を洗って大切に使い回している今の生活者にとって、中身は変わらないのにパッケージ代のせいで高くなっているお惣菜は、非常に買いづらいものに映ります。それどころか、過剰に立派で豪華なプラスチック容器に対して、「これは余計なゴミだし、無駄なコストを押し付けられているのではないか」という、冷静でシビアな視線すら向けられ始めています。

ここで、生活者の心理に劇的な変化、いわば「見た目に対する完全な割り切り」が起きていることが、別の質問からも実証されました。

これまで、中食(お惣菜)の売り場において、容器を単色にしたりチープにしたりすることは、食卓に出したときの「手抜き感」や「後ろめたさ」という、生活者の罪悪感に繋がると言われてきました。しかし、日常のインフレを前に、生活者の側で「値段が上がらないなら、見た目は簡素で全然構わない」という心理的な整理(割り切り)が、すでに7割近くの間で完了しているのです。

言葉の説明よりも、お店の「引き算の優しさ」が響く

今回の調査結果の中で、リテールやメーカーのマーケッターが最も肝に銘じるべきデータが、店舗への期待に関する「複数回答」と、そこから1つに絞らせた「単一回答」の間に見られた、「本音と建前のギャップ」です。

今後、原材料や資材の変動が懸念される中で「利用したいお店の姿勢」を複数選んでもらうと、「パッケージの簡素化(34.6%)」や「規格外品の充実(26.4%)」のほか、「地産地消への貢献(15.8%)」や「資源回収ハブとしての役割(13.6%)」、「値上げ理由のPOP説明(13.0%)」など、企業の先進的でエコな取り組みに対しても満遍なく「好感が持てる」という共感の票が入ります。

ところが、「では、その中で最も利用したいお店はどれですか?」と、自分の普段の買い物に直結する一票に絞ると、生活者の本音は明確な絞り込みを見せます。

「エコ活動への協力(0.9%)」や「丁寧な理由説明(4.4%)」といったイメージ重視の項目は本音の段階で急激にスコアを減らします。 代わりに、「パッケージの簡素化や過剰包装の削減を行い、価格の上昇を抑える店舗」が31.4%という、2位を大きく引き離す圧倒的な支持を集める結果となっているのです。

前回のコラム(米の高騰時)では、売り場への関心の低下を防ぐために店側の「プロとしての丁寧な情報発信や、人間味のある信頼構築」が武器になると結論づけました。しかし、今回のナフサショックという資材の危機において、生活者が本当に求めているのは、言葉による誠実な説明よりも、「過剰な包装を潔く引くことで、中身の価格を維持してくれる」という、具体的な行動による『引き算の優しさ(誠実さ)』であることが見えてきました。

今回のラーニング:生活者の工夫を応援する「応援団」になろう

今回の調査結果から得られる販促創造研究所としての最大のラーニングは、生活者が求めているパッケージの簡素化や引き算の仕様は、環境保護という理念のためではなく、「自分たちの日常生活の価格を維持するための最大の手段」として切実に熱望されているという事実です。

生活者は、惣菜の見栄えがシンプルになることを嫌がるどころか、受け入れる心の準備をすでに済ませています。一度「過剰なトレイはゴミになるだけだし、その分安い方がいい」と気づき、家の中でジッパー袋を洗っている生活者に対して、危機の収束後に元の包装を戻せば、それは「企業の意図が伝わらないコストアップ」として捉えられ、かえって店から足が遠のく原因になりかねません。

価格競争や安売り合戦が激化する今だからこそ、店やメーカーが取るべき道は、利益を削る我慢比べではなく、生活者がキッチンで繰り広げている前向きな「モノを大切に使い倒す工夫」を、売り場から全力で肯定し、応援するような販促提案です。

例えば、惣菜売り場において、単にチープな容器で安く売るだけではなく、「このパックは、そのまま冷凍ストックも可能です。家の中で移し替えるジッパー袋の手間とコストを節約できます!」とアピールする。あるいは日用品の棚で、「最後の一滴までしっかり使い切れるボトルの裏技」をPOPで紹介する。

生活者の「家の中での健気な工夫」と「店の品揃えやPOP」が完全にシンクロしたとき、生活者はその店に対して「安さだけを求める売り場スルー」を起こすのをやめ、「このお店は、私たちの暮らしのやりくりを一番分かってくれている、心強い相棒だ」という、価格比較アプリでは決して切れない、温かく深い信頼関係(ロイヤリティ)を寄せてくれるようになるはずです。

生活者の「割り切りの兆し」に徹底的に寄り添う、思い切った「引き算の優しさ」。それこそが、これからの激動のインフレ時代を、生活者とともに生き抜く小売業の最大の武器になるのではないでしょうか。

本調査が皆さまの売り場づくりや企画のヒントに少しでもお役立ちできれば幸いです。

 

■調査方法:ウェブ調査 ■調査エリア:全国 ■調査対象者:20〜69歳男女 ■サンプル数:合計500サンプル (20代~60代までの男女各50名)■調査期間:2026年5月

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