スコープ販促創造研究所

買い物行動・意識定点調査(第6回Vol.2)買い物は「息抜き」から「スマートな作業」へ 2年半の定点データで見えた、生活者の買い物スタイルの変化とこれからの売り場づくり

買い物行動・意識定点調査(第6回Vol.2)買い物は「息抜き」から「スマートな作業」へ 2年半の定点データで見えた、生活者の買い物スタイルの変化とこれからの売り場づくり

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当社では 2021年6月より、生活者の購買心理や来店実態をとらえる「買い物行動・意識定点調査」を継続して実施してきました。今回のコラムでは 5年にわたる調査の中から、本格的なインフレ局面を迎えた直近2年半(2023年10月〜2026年5月の全6回)のデータに焦点を当て、生活者と実店舗との関係の変化をひもといていきます。

買い物の「楽しさ」が静かに薄れている?

その中で、特に注目すべき指標が「実店舗で買い物をする際の気持ち」の推移です。

買い物を「楽しみ・楽しい」と感じる人(強く実感する層:Top2)は、2023年10月調査の31.6%から今回の2026年5月調査では26.8%(過去最低)へと減少しました。同様に「気分が上がる」も23.8%から21.8%(過去最低)へ、「息抜きになる」も30.0%から25.8%(過去最低)へと緩やかな下降線をたどっています。その一方で、「面倒くさい」と感じ
る層(実感計:Top3)は38.8%と高い水準が続いています。

スコアを見ても、実店舗での買い物には、日常のちょっとした気分転換やワクワクを感じる「息抜きの場」としての役割がありますが、現在、生活者にとっての買い物は、少しずつ「効率よくこなすべき作業(タスク)」へと変質し始めているように見受けられます。

なぜ、生活者にとっての買い物の情緒的な価値が薄れ、「作業化」が進んでいるのでしょうか。時系列データを丁寧にひもとくと、そこには物価高の長期化に伴う4つの行動・意識の変化がありました。

データでひもとく「買い物の作業化」をもたらした4つの大きな変化

① 主食から「お菓子・おやつ」へ波及した物価高の実感

まず挙げられるのが、生活者が感じる「物価高の痛点」の変化です。主食である「米・パン・麺」への物価高実感は、2025年5月(54.8%)をピークに直近の2026 年5月調査では 28.2%まで落ち着きを見せています。一方で、急速に数値を伸ばしているのが「お菓子・スナック」です。2023年10月にはわずか8.8%だったスコアが2026年5月には23.2%へと約2.6 倍に急増しました。

米や野菜といった必需品の高騰は家計のやりくりで必死に防衛しますが、お菓子やスイーツといった嗜好品の値上がりや容量の減少(実質値上げ)は、生活者から「買い物のついでに自分を癒やす、ささやかなプチ贅沢」の機会を奪うことになります。日々の小さな楽しみが値上がりによって削られたことが、買い物のワクワク感を低下させる大きな引き金になっていると考えられます。

② ドラッグストア・ディスカウントへの来店シフト

買い物が「目的買いの作業」として整理された結果、業態の利用動向にも変化が現れています。
最近2ヶ月の来店率を見ると、食品スーパーが約71%(2023年10月:72.2% 2026年5月:71.4%)で安定した軸となっている一方で、ドラッグストア(2023年10月:58.6% 2026年5月:62.4%・過去最高)やディスカウントストア(2023年10月:17.4% 2026年5月:19.6%・過去最高)が着実に利用者を増やしています。対照的に、総合スーパー(GMS)は49.6%から47.4%へと緩やかに減少傾向を示しています。

広い売り場を歩き回ってさまざまな商品を吟味するスタイルから、日用品や加工食品を「手頃な価格で手早く揃えられる店舗」へと、生活者の足が自然と向かっていることがわかります。

③ 「まとめ買い&短時間退店」の定着

買い物の楽しさが薄れる中で、生活者の店舗内での立ち回りは急速に効率化しています。実店舗で意識することとして、「まとめ買いをする」と答えた人は2023年10月の15.0%から2026年5月には20.6%(過去最高)へと上昇しました。また、「あらかじめ買うものを決めておき、買ったらすぐ退店する」も15.0%に達しています。

「特売日を狙ってまとめ買いをする(37.8%)」という行動が定着する中で、店頭に長居して必要なものを、できるだけ短時間で、できるだけお得に、計画的に買い揃えて帰る」という、タイパとコスパの両方を重視したスマートな買い物スタイルが確立されつつあります。

④ ポイ活の高度化:「1つの店で貯める」から「上手に組み合わせる」へ

生活防衛の手段として定着したポイ活も、より洗練された形へと進化しています。
普段の買い物で意識していることを2023年10月と2026年5月で比較すると、「ポイントが貯まる店舗で主に買い物する」という単一店舗への依存は26.6%から21.6%へと減少傾向にあります。

一方で、「複数のポイントが一度に貯まる店舗を選ぶ(二重取り)」は、2023年10月時点で7.0%、2025年11月時点で6.2%だったものが、今回の2026年5月調査で9.2%(過去最高)へと急伸しました。また、「PB・ノーブランドを選ぶ」行動も2023年10月の7.8%から2024年4月以降12%台(2026年5月は12.8%)へと高止まりしています。

特定のポイントに縛られるのではなく、キャッシュレス決済や複数ポイントの還元を組み合わせながら、最も合理的にお得を手に入れる生活者のリテラシーの向上がうかがえます。

店内でのリアルな知恵:「家庭内ロスゼロ」を徹底する生活者

買い物を短時間でスマートに済ませる生活者ですが、それは決して買い物を投げやりにしているわけではありません。むしろ、店内に一歩足を踏み入れた生活者は、「買ったものを絶対に無駄にしない」ための緻密な知恵を発揮しています。

今回の調査で食品スーパーでの行動実態を調べたところ、極めて実践的な防衛行動が高い割合で見られました。

「早めに食べる時は賞味期限が近いものを積極的に選ぶ(てまえどり)」:45.4%が実践(意識層を含めると67.8%)

「事前に欲しい物をメモし、不要なものは買わない」:41.2%が実践(意識層を含めると66.6%)

「フードロスを減らすために冷凍できる商品をなるべく購入」:39.2%が実践(意識層を含めると61.2%)

「その日食べきれるものだけ買う」:30.6%が実践

これらの行動は、フードロス削減への意識も背景にはありますが、主な動機は「せっかく買ったものを無駄にしたくない」「少しでも家計のロスを減らしたい」という、より実感に近い生活防衛意識にあるのではないでしょうか。

これからの売り場に求められること:スマートな暮らしを支える「頼れるパートナー」へ

生活者にとって買い物が「作業化」し、「楽しさ」が薄れつつある現状に対して、店舗やメーカー側はどのように向き合うべきでしょうか。

買い物が作業化したからといって、生活者が店舗への関心を失ったわけではありません。物価高が長期化する環境の中で、生活者は「自分の家計と暮らしを守るために、知恵を使って極めてスマートに買い物をコントロールしている」のです。

これからの実店舗に求められるのは、無理に過去の「ワクワク感」を演出して引き留めようとすることではなく、生活者のこのスマートな工夫を支え、買い物の負担を減らしてあげることではないでしょうか。

「買い物の作業」をストレスなく完結できる売り場環境

レジ待ちの解消やスムーズな会計、目的の商品が見つけやすい動線づくりなど、生活者が求める「タイパ」に誠実に応えること。

「使い切り・ストック」を応援する売り場提案

「まとめ買いした食材をそのまま小分け・冷凍保存できるアイデアPOP」や、「冷凍しても美味しさが長持ちする小分け商品の充実」、「てまえどりへのポイント還元」など、生活者のロスゼロ行動に寄り添う提案を行うこと。

買い物の負担やストレスを減らし、家庭内での工夫をそっと後押ししてくれる店舗に対して、生活者は「このお店は、私たちの暮らしのやりくりを本当によく分かってくれている」という、価格競争だけでは揺るがない深い信頼を寄せてくれるはずです。

生活者のしなやかな変化を受け止め、その暮らしに伴走するパートナーとしての売り場づくりが、今まさに求められています。

■調査方法:ウェブ調査 ■調査エリア:全国 ■調査対象者:20〜69歳男女 ■サンプル数:合計500サンプル (各回)■調査期間:2023年10月〜2026年5月(半年ごと・計6回)

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