PCに表示されるレコメンド広告。私の場合はキャットフードや猫グッズがよく登場する。そんな中、「30歳を目指す猫の食事」というコピーが思わず目にとまった。
飼っている15歳の猫の健康が気になる私にとって、「ヒューマングレード」「グレインフリー」「国産」などは心惹かれる言葉だ。だがそんな数多の言葉の中から「30歳を目指す」が目を引いたのは、単なる機能訴求を超えて「叶うかもしれない未来」が具体的にイメージできるからかもしれない。
数字は現実感を伴う。漠然とした「長生き」より、「30歳」という具体的な数字の方が心に響く。しかもその「30歳」は荒唐無稽な数字ではない。家猫だと20歳超えの猫が珍しくなく、25歳の猫もSNSや動画で度々見かけるようになった今、30歳は「もしかしたら・・・」と思えるくらいにはリアルだ。
シニア猫を飼っている人なら理解できると思うが、若い時と比べて衰えたもののその可愛さは変わらず、むしろ愛しさは増すばかり。一緒に暮らせる幸せな日々はいつまで続けられるのだろう?という不安がよぎることもある。このコピーに心が動かされるのは、猫への愛ゆえの不安、希望が巧みに刺激されるからなのかもしれない。
だから私はバナーをクリックしてしまう。30歳まで生きる猫の未来を想像し、製品が本当に我が家の猫にふさわしいかチェックする。「丁寧に作った」「国産無添加」「関節の健康維持」「毛玉サポート」「オメガ3脂肪酸配合」「グレインフリー」「ノンオイル」・・・。
ポチッ。
コピーには人に決断のきっかけを与える力が確かにある。私たちが提唱する「語感デザイン」の視点でいうと、「読後感設計」(図1参照)の巧みさによりユーザーの行動を変容させる力が働いたということだ。私がチョロいわけではない。


