-未来志向の贈り物選び❶- サステナブルなギフトが新たなスタンダードになるためには?
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- 今井 洋Hiroshi Imai
- 大手流通小売・メーカー・官公庁等様々なクライアントのマーケティングリサーチとプランニングを担当。近年はソーシャルデータを活用した生活者インサイト分析にも注力。
6月環境月間連載コラム -前編-
6月は環境月間。環境とサステナビリティに関する情報は絶えることなく増えています。昨年当社で実施したサステナブルな食料品の買い物」に関する意識調査では、半数弱の人がサステナブルな買い物を意識していると回答しており、このスコアはさらに上昇しているのではないでしょうか。
今回は、同じ買い物でもギフトに焦点を当ててみました。早くも5月中旬からお中元ギフトの予約が始まっており、その中にはフェアトレード認証の商品やサステナブルなギフトが多く展開され、特集として取り上げられることもよく見かけます。また、エシカル素材を使っていたり、ごみが出ない工夫をしていたりと、環境に配慮したパッケージや包装などのサービスも提供されています。
そこで、昨年お中元やお歳暮を贈った方々を対象に、2023年5月16日~22日の7日間「ギフトにおけるサステナブルへの関心や考え」について調査を行いました。この調査を通じて、ギフトという特別な世界でのサステナビリティの浸透や意識の状況を明らかにし、さらにはギフトを提供する側の商品政策等に関するヒントも探っていきたいと思います。
※「サステナブルなギフト」は、人間・社会・地球環境に配慮したギフトのことを指し、具体的には、[地球環境保全・生物保全に貢献できるギフト][(生産者や途上国の人々、ハンデキャップのある人など)人々の持続可能な生活を支援できるギフト][贈る相手の健康を考えたギフト][女性・若者・起業家など、次世代を担う人々などを応援・支援できるギフト]と最初に提示したうえで、回答してもらっています。
■サステナブルなギフトで伝えたい “贈り物選びのセンス”と“相手への深い想い”
〈あなたが、お中元やお歳暮で人にギフトを贈ることによって、相手に伝えたい・相手から思われたいということについて、以下の項目ごとにご自身のお気持ちに当てはまるものを1つずつお選びください。〉 n=1,014 *全体および 22年お中元・お歳暮のサステナブルなギフト贈答者・非贈答者別 *各項目「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」「どちらともいえない」「どちらかといえば当てはまらない」「当てはまらない」のうち、「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と回答したスコア
まず、お中元やお歳暮を贈ることによって、相手に伝えたいこと・相手から思われたいことについて聞いたところ、贈り物を通じて「感謝の気持ちを伝えたい」という人が全体の84.7%に上り、「相手に喜んでもらいたい」と考えている人が77.5%と、ギフトの中身に関わらず共通した想いが見受けられます。
一方で、サステナブルなギフトを実際に贈った人は、「意識や感度が高く、新しい価値を提供してくれる人と思われたい」(63.9%)、「ギフトの包装やメッセージにもこだわり、贈り物を特別なものにしたい」(62.7%)、 「意外性のあるギフトを選び、印象に残りたい」(54.0%)といった意識も強く、サステナブルなギフトを選ぶことによって、単に環境や人への配慮だけでなく、自身の個性や感度の高さを表現し、贈り物を特別にする方法としても活用されていることがわかります。
■想いを込める、相手に喜んでもらう、予算に合うといった基本要素をベースに、“ギフト×サステナブル”は、贈り物の新常識に
〈以下の項目ごとに、お中元やお歳暮をはじめ、人への贈り物について「サステナブル」な要素が加わることに対するあなたのお気持ちに当てはまるものをそれぞれ1つずつお選びください。〉 n=1,014 *全体および 22年お中元・お歳暮のサステナブルなギフト贈答者・非贈答者別 *各項目「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらともいえない」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」のうち、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答したスコア
お中元やお歳暮などの贈り物において、サステナブルな要素が取り入れられることについて、58.0%の人々は「社会の流れからも、贈り物にサステナブルな要素が加わることは自然な流れだ」と感じており、社会全体の環境意識の高まりやサステナビリティへの関心が反映されていることがわかります。
しかし一方で、56.6%の人々は「贈り物は、あくまでも相手あってのことなので、無理にサステナブルを考える必要は無いと思う」との意見を持っており、贈り物の主目的が相手の喜びや感謝の気持ちを伝えることであるということからも、サステナブルな要素は大切であるものの、それが相手の喜びを損なう場合には無理に取り入れる必要はないという冷静な考えも同時に持っています。
また、サステナブルなギフトを実際に贈っている人々の考えを深堀りすると、SDGsへの具体的な貢献という価値と、見た目や価格といった贈り物選びとして基本的な要素の両方を満たす商品が求められていることも読み取れ、社会貢献“風”(なんとなく良いことをしている)レベルでは選ばれづらいということがわかります。
■健康で長生き。 “人にやさしいサステナブル” がギフトに求められるトレンド
〈お中元・お歳暮で人に贈り物をする場合、以下のような「サステナブルなギフト」を贈ることに対するあなたのお気持ちについて、以下の項目ごとにご自身のお気持ちに当てはまるものを1つずつお選びください。〉 n=1,014
*全体および 22年お中元・お歳暮のサステナブルなギフト贈答者・非贈答者別
*各項目「人に贈りたいと思う」「どちらかといえば人に贈りたい」「どちらともいえない」「どちらかといえば人に贈りたいとは思わない」「全く贈りたいとは思わない」「わからない」のうち、「人に贈りたいと思う」「どちらかといえば人に贈りたい」と回答したスコア
サステナブルなギフトを大きく4つのジャンルに分け贈答意向を聞いたところ、「贈る相手の健康を考えたギフト」を贈りたいと答えた割合が全体の67.9%と、昨年のギフトの中身に関わらず高い支持を集めています。
地球環境保全、人々の持続可能な生活の支援、次世代を担う人々の支援を目的としたギフトについても50%程度の人が贈りたいとは考えていますが、これらのギフトに対する意向は昨年のサステナブルなギフト贈答者と非贈答者とで大きく異なっているのが特徴です。
以上のことから、ギフトという点では、身近な人の“持続可能な生活”(=健康で長生き)という部分に焦点を当てていくことも重要と言えます。
★今回の気付き・ラーニング
今回の調査では、生活者が贈り物にサステナブルな要素を加えることを受け入れており、相手に対して感謝以上の価値を伝える手段として考えていることが明らかになりました。ただし、サステナブルの範囲は広く、全ての人が4つのジャンルにおいても同じように関心を持っているわけではありません。その中で特に注目されたのは、「人にやさしいサステナブル」なギフトであり、相手の健康を気遣い長生きしてもらいたいという願いが受け入れやすいことがわかりました。現在、ギフトとして扱われている商品の中には、特定保健用食品や減塩・無糖、無添加・無農薬など、特に健康を意識したものが多く存在していますが、一部は定番化されてしまっているように感じます。こうしたアイテムも、「人にやさしいサステナブル」なアイテムとして展開することで、新たな価値付けができる可能性があります。
また、環境や生物保全、生産者支援といった「地球にやさしいサステナブル」に関しても、一定の関心や購買意欲は存在しています。幅広い選択肢を提供することで、生活者の共感を生みやすいより良いギフト体験を提供することが有効と思います。贈り物という非日常の行動を通じて、サステナブルに対する意識が広まり、環境や健康を考慮した選択が普及していくことで、より持続可能な社会への一歩が進むのではないでしょうか。
次回6月後半公開予定のコラムでは、昨年のお中元・お歳暮で実際にサステナブルな贈り物をした人の意識や行動について詳しく見ていきます。
■調査方法:ウェブ調査
■調査エリア:全国
■調査対象者:全国在住20〜79代男女の中で、
・既婚者
・昨年(2022年)のお中元もしくはお歳暮を贈った(法人向けを除く)
■サンプル数: 本調査 合計1,014サンプル
■調査期間:2023年5月16日(火)~22日(月)
■株式会社ジャストシステムが提供するセルフ型アンケートシステム『Fastask』の登録モニターを対象に調査を実施
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