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-買い物行動・意識定点調査- 物価高への挑戦、タイムパフォーマンスへの新たな意識

-買い物行動・意識定点調査- 物価高への挑戦、タイムパフォーマンスへの新たな意識

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昨年10月に引き続き、2024年4月に20代から60代の男女500人を対象に生活者の買い物行動・意識に関するアンケート調査を実施しました。依然、物価高の上昇が続く中、どのような変化が起きているのでしょうか?また、今回の調査では、日常生活で耳にする機会が増えた「タイパ(タイムパフォーマンス)」と買い物の関係についても見てみたいと思います。

■近場への回帰と遠方の停滞。ガソリン高が買い物行動を制限?

<Q.以下の選択肢のうち、あなたが最近2か月で来店(買い物・利用)した店舗を全てお選びください。> *コロナ禍(2021年6月)・コロナ禍明け(2023年10月)・2024年4月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

前回の調査から半年経過し、約10%の生活者が依然として実店舗を利用していないと回答しており、オンラインショッピングや配達サービスの利用が背景にあると考えられます。

 

また、「近場のショッピングモール」と「百貨店」の来店率が増加しており、「外出」という日常的な行為を再び楽しむようになっていることがわかります。しかし、「遠方のショッピングモール」の来店率に変化が無いように、高止まりするガソリン価格などの経済的要因が、移動範囲を限定していることが考えられます。今後も交通手段の選択やアクセスの容易さが、生活者の意思決定においてさらに重要な要素となることが予測されます。

■伸び悩む、買い物へのポジティブな感情

<Q.あなたが、実店舗(実際に品物を並べて売っている店舗)でお買い物をする際の現在におけるお気持ちについて、それぞれ当てはまるものを1つずつお選びください。> *[とても当てはまる][当てはまる][どちらかといえば当てはまる][どちらともいえない][どちらかといえば当てはまらない][当てはまらない]の6段階のうち、TOP2のスコア *コロナ禍(2021年6月)・コロナ禍明け(2023年10月)・2024年4月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

実店舗で買い物をする際の現在における気持ち

*2024年4月における性別・性年代別スコア

2024年4月における性別・性年代別スコア

2021年6月の調査以降、ごく僅かではありますが「楽しみ・楽しい」「息抜きになる」「気分が上がる」といったポジティブな感情が上昇しています。いずれも2・3割のスコアと物足りなさはありますが、買い物に対する人々の姿勢がゆっくりと好転する兆しを示しているといえるのではないでしょうか。特に女性や30代・40代の層で顕著で、買い物がライフスタイルの一部として重要な役割を果たしていることがわかります。

 

しかし、この僅かなポジティブな感情の変化とは裏腹に、「面倒くさい」というネガティブな感情も14%と半年前から変化していません。物価の上昇が続く中、価格面での選択肢の幅も広い、オンラインショッピングの普及が進むにつれて、実店舗での買い物への抵抗感は今後も増す可能性も考えられます。

 

特に20代の若い世代ではオンラインショッピングに慣れ親しんでいるため、実店舗においても、オンラインと同等もしくはそれ以上の即時性や便利さを実現するとともに、オンラインでは体験できないサービスや商品を提供することが求められます。

■さらに高まる物価高への懸念

<Q. あなたが普段お買い物をする際、現在の物価に対するお気持ちについて、以下の選択肢より最も当てはまるものを1つお選びください。N=500 *20代~60代 合計スコア、性別・性年代別スコア

現在の物価に対する気持ち

次に、買い物に対する感情と密接に関係する「物価高」に対する意識について見てみます。

全体で物価高を感じていると答えた人の割合は85.8%に上り、これは半年前に比べて2.8ポイントの上昇です。家計への圧力は増加の一途をたどっています。

 

特に注目すべきは、実店舗での買い物を楽しむと感じる30・40代女性の間で、物価の上昇に対する意識が高まっている点です。この世代は小売市場における主要な生活者層であり、その購買行動の変化は直接小売業界に影響します。彼女たちの物価高に対する負担は、単なる購入選択にとどまらず、家族生活の質にも波及する恐れがあります。

 

子育て世代の家庭では、教育や余暇活動への投資が子どもの発育にとって不可欠ですが、物価上昇による予算の制約はこれらの活動を制限しかねません。これは単なる家計の問題ではなく、社会全体の幸福度と未来に対する懸念事項といえます。

■日常の小さな楽しみにも物価高の影響。「お菓子」に対する価格上昇を感じる人が増加

<Q. 以下の商品カテゴリーの中で、あなたが普段のお買い物で特に「物価高を感じる」と思うものをそれぞれ最大3つまで選んでください。>N=500 *コロナ禍明け(2023年10月)・2024年4月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

では、具体的にどのようなアイテムに物価高を感じているのでしょうか。

生鮮果物・野菜、乳製品、たまごが物価高を最も感じるアイテムの上位にランクインしていますが、たまごについては、2024年に入り市場価格が大きく値下がったこともあり、2023年10月と比較して物価高を感じる割合も大幅に減少しています。

また、お菓子・スナックに物価高を感じる割合が著しく増加しており、生活者の余暇や楽しみに関連する商品に対しても物価上昇の影響が及んでいることがわかります。

■時間効率を求める生活者。実店舗のタイムパフォーマンスと購買体験のバランス

<Q. あなたは、実店舗での買い物をする際、どの程度"タイムパフォーマンス"(時間を効率よく使うこと)を意識していますか?以下の店舗ごとに、最も近いものを1つお選びください>N=各業態直近2ヵ月以内来店者 *20代~60代 合計スコア

業態別 買い物時のタイムパフォーマンス意識

日常生活で「タイパ(時間対効果)」という言葉をよく聞くようになりました。実店舗における買い物のタイムパフォーマンスに対する意識は、オンラインショッピングの普及もあり、重要な指標となるでしょう。では、生活者は実際にどれほど時間効率を意識しているのでしょうか?

「意識している」または「どちらかといえば意識している」と答えた生活者の割合は、業態によって差はありますが、おおよそ3割程度です。これは、生活者が時間を効率的に使うことに一定の関心を持っていることがわかります。特にアウトレットモールや食品スーパー、ディスカウントストアでは、時間とコストの両方に敏感な顧客が多く見受けられます。

一方で、遠方のショッピングモールや百貨店は、タイムパフォーマンスを意識していない層が大きく、買い物自体を楽しみ、ショッピング体験を重視しているため、時間をかけて買い物をする傾向にあることを表しています。そのため、パーソナライズされた顧客サービスの提供や、ゆったりと買い物を楽しむことができる特別なイベントの開催・店内の雰囲気作りなどが重要といえます。

■「事前リサーチ」や「衝動買いを控える」など。業態によって異なるタイパ向上へのアクション

<Q. あなたは、実店舗での買い物におけるタイムパフォーマンスを上げるためにどのようなことを行っていますか?以下の選択肢より当てはまるものをすべてお選びください。>N=前問 各業態「タイムパフォーマンスを意識している・どちらかといえば意識している」回答者 *20代~60代 合計スコア

タイムパフォーマンスを上げるために具体的に行っていること

では、買い物においてタイムパフォーマンスを実現するために、どのような行動をしているのでしょうか?

多くの人々は、買い物リストを作成したり、事前にオンラインで商品情報を調べたりすることで、買い物を行っていることがわかります。ウインドーショッピングや衝動買いを控えることも、単に時間を節約するだけでなく、購入後の後悔を減らし、家族との時間やカフェでのリラックスタイムなど、個人にとって価値ある活動にその時間を使うことができ、賢い買い物方法は、日々の生活を豊かにする一助となります。

さらに、セルフレジやキャッシュレス決済の利用も、レジでの待ち時間が減り、買い物の全体的な効率の向上につながります。

★今回の気付き・ラーニング

今回の調査から、物価上昇が特に30~40代の女性に影響していることが明らかになりました。この層は実店舗での買い物への期待が大きいですが、経済的なプレッシャーを強く感じており、買い物への楽しみを減少させています。また、依然として買い物を面倒と感じている人や、買い物の効率を高めることへの意識も高まっています。

 

これらの課題に対処するためには、買い物の簡便さを向上させ、同時にショッピングの楽しさや体験価値を拡充することが今後も重要であることは変わりません。そのためにも先進技術の活用、特にAIやVRのようなデジタルツールが、これらの目標を達成するための重要な手段になると思われます。

この調査が皆さまの企画のヒントに少しでもお役立ちできれば幸いです。

 

■調査方法:ウェブ調査

■調査エリア:全国

■調査対象者:20〜69歳男女

■サンプル数:合計500サンプル (20代~60代までの男女各50名)

■調査期間:2024年4月12日(金)~15日(月)

 

※本情報の引用・転載時には、必ず当社クレジットを明記いただけますようお願い致します。

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