スコープ販促創造研究所

-買い物行動・意識定点調査(第4回)- 物価高をチャンスに変える!効率と楽しさを両立させる売り場作りの未来像

-買い物行動・意識定点調査(第4回)- 物価高をチャンスに変える!効率と楽しさを両立させる売り場作りの未来像

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今年4月に引き続き、2024年11月に20代から60代の男女500人を対象に買い物行動・意識に関するアンケート調査を実施しました。物価高が消費者の意識や行動に与える影響を探るとともに、実店舗での買い物がもたらすポジティブな側面や新たなサービスへの期待を明らかにしました。また、これらを踏まえ、消費者に選ばれる店舗を作るための新たな価値提案について考えていきます。

❶ 物価高を実感する消費者、広がる家計への影響

<Q.あなたが普段お買い物をする際、現在の物価に対するお気持ちについて、以下の選択肢より最も当てはまるものを1つお選びください。>N=500 *20代~60代 合計スコア、性別スコア

●「物価高を感じる」 時系列推移 *コロナ禍明け(2023年10月)、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代

2024年11月の調査によると、消費者の約84%が「物価高を感じる」と回答しています。その中でも52.4%が物価高を強く感じており、2023年10月(49.8%)と比較して2.6pt上昇。物価高に対する意識が依然として高い水準が続いています。
特に女性は「物価高を強く感じる」割合が58.4%と男性の46.4%を大きく上回っており、女性の方が日用品や食品などの買い物において物価高を身近に感じていることがうかがえます。

また、男女間での意識の差に加え、時系列データでは男性の「物価高を強く感じる」割合が2023年10月(41.2%)から2024年11月(46.4%)に上昇していることから、男性も徐々に物価高への危機感が高まっていることが分かります。それだけ、物価高が生活全般にわたる影響を与えていることを反映しており、男女を問わず家計への意識が強まっているといえます。

❷ 生鮮食品や穀物など必需品の価格上昇が負担感を増幅

<Q.以下の商<Q.以下の商品カテゴリーの中で、あなたが普段のお買い物で特に「物価高を感じる」と思うものをそれぞれ最大3つまで選んでください。>N=500 *コロナ禍明け(2023年10月)、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア品カテゴリーの中で、あなたが普段のお買い物で特に「物価高を感じる」と思うものをそれぞれ最大3つまで選んでください。>N=500 *コロナ禍明け(2023年10月)、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

「物価高を感じるアイテム」としては、「生鮮果物・野菜」(50.0%)が最も多く挙げられました。これは2023年10月(48.4%)と比較して微増しており、日常的に購入される必需品に対する価格感覚が顕著であることを示しています。また、「米・パン・麺」は2023年10月の14.0%から2024年11月には32.8%と急増、2024年夏に起きた「令和の米騒動」以降、品不足は解消しましたが、依然価格は高止まりが続いており、穀物関連商品の価格上昇が消費者の負担感を大きく押し上げていることが読み取れます。
さらに、「たまご」も引き続き高いスコア(31.6%)を記録しており、これらの基本的な食品が物価高の影響を受けていることが明らかです。一方で、「乳製品」については、2024年11月に12.8%と低下しており、他の必需品と比較して意識が弱まりつつある傾向も見られますが、消費者は特に「日常生活に不可欠な食品」に対して物価高を強く意識しており、日常的な支出における負担増加が消費者心理に大きく影響を与えていると考えられます。

❸ 物価高の中で、実店舗の買い物がもたらす楽しさと満足感

<Q.あなたが、実店舗(実際に品物を並べて売っている店舗)でお買い物をする際の現在におけるお気持ちについて、それぞれ当てはまるものを1つずつお選びください。> *[とても当てはまる][当てはまる][どちらかといえば当てはまる][どちらともいえない][どちらかといえば当てはまらない][当てはまらない]の6段階のうち、TOP2のスコア *コロナ禍(2021年6月)、コロナ禍明け(2023年10月) 、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

今回の調査では、実店舗での買い物に対する「楽しみ・楽しい」という感情が35.0%に達し、2021年6月(30.3%)から一貫して増加しています。また、「満足感が得られる」(29.2%)や「気分が上がる」(28.8%)といったポジティブな感情も同様に上昇しており、実店舗での買い物が単なる消費行動にとどまらず、楽しみや満足感を提供する場として捉えられていることがわかります。一方で、「息抜きになる」という感情も31.0%と高い水準を維持しており、実店舗での買い物が日常の中でのリフレッシュ手段としての役割も果たしていると考えられます。

これらのポジティブな感情の増加は、「物価高を強く感じる」消費者が過半数を占めるという状況と一見矛盾しているように感じられるかもしれません。しかし、物価高による節約意識の高まりや我慢を重ねる中で、実店舗での買い物が「ストレス解消」や「自分へのご褒美」としての価値を持つようになっている可能性があります。限られた支出の中で、自分の手で商品を選び、購入する行為が心理的な解放感をもたらし、結果的に「楽しい」「満足感がある」といったポジティブな感情を引き出していると考えられます。

❹ 「近場」「馴染みの店」「無駄を省く行動」が効率性と安心感を支える

<Q.以下の選択肢のうち、あなたが現在において、実店舗でお買い物をする際に意識していることは何かありますか。> *コロナ禍(2021年6月)、コロナ禍明け(2023年10月) 、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

物価高を背景に、消費者が支出を抑え、計画的に買い物を行おうとする意識が高まっています。2024年11月の調査では、「自宅から近いお店に行くようにする」という回答が40.8%と依然として高い水準を維持しており、物価高の中で効率的な買い物を重視する姿勢が伺えます。
特に「馴染みのお店を利用する」(26.6%)という行動は、2021年以降継続して見られる特徴的な傾向です。物価高や節約意識が高まる中、消費者にとって「馴染みのお店」は、信頼性があり、買い慣れた環境で安心して計画的な買い物ができる場所として捉えられている可能性があります。馴染みのお店では、「商品ラインナップが分かりやすい」「価格感覚が掴みやすい」といった心理的な安心感や効率性が生まれ、無駄な時間や支出を抑える行動につながっていると考えられます。
また、「ついでの立ち寄りをしない」(9.0%)といった回答も増加しており、無駄な支出を避け、時間的・心理的なストレスを軽減しようとする意識が強まっています。これは、実店舗での買い物に対して見られた「面倒くさい」「不安を感じる」といったネガティブな感情とも関連しており、効率を重視する行動がこれらの感情を軽減する役割を果たしていると考えられます。
このように、物価高の影響を受ける中で、消費者は「近場」「馴染み」「効率」といった要素を重視しており、実店舗での買い物がポジティブな感情を提供する場であると同時に、合理的で計画的な行動が支えとなっています。

❺ 買い物を特別な体験に変えるツールとして可能性を秘める「店内チラシ」の存在

<Q.あなたが現在、実店舗(実際に品物を並べて売っている店舗)に来店する際にご覧になったり、参考にしている情報は何かありますか。> *コロナ禍(2021年6月)、コロナ禍明け(2023年10月) 、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア<Q.あなたが現在、実店舗(実際に品物を並べて売っている店舗)に来店する際にご覧になったり、参考にしている情報は何かありますか。> *コロナ禍(2021年6月)、コロナ禍明け(2023年10月) 、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

実店舗での買い物時に参考にしているメディアでは、「WEBチラシ」(26.4%)が最も多く参照されていますが、「折込チラシ」(21.4%)と「店内に置かれているチラシ」(12.8%)を合算すると34.2%に達し、紙媒体のチラシが依然として重要な情報源であることが分かります。特に、「店内に置かれているチラシ」は、消費者が店舗内で直接手に取ることができる紙媒体として、店舗独自の強みを発揮しています。
また、実店舗での買い物が「楽しみ」「満足感」といったポジティブな感情を引き出している背景を考えると、店舗に設置されたチラシはその体験を補完し、さらに高める重要な役割を果たしていると言えます。ただし、この役割を十分に活かすためには、単に商品のセール情報を伝えるだけでなく、「店内設置のチラシだからこそできる内容や見せ方」に工夫を加えることもポイントになりそうです。
例えば…
*店内の導線や商品配置と連動した内容を盛り込み、効率的な買い物をサポートする工夫を組み込めば、特価商品のコーナー案内やセット商品購入のおすすめ順序など、消費者がその場で行動に移せる情報を提供できるようになります。
*「家族向け」「一人暮らし向け」などのターゲットごとのニーズに加え、「週末のプチ贅沢」「健康を意識した買い物」「時短・効率化」といった“コト消費視点”を取り入れた情報展開を行うことで、消費者一人ひとりの目的や体験価値に寄り添った提案が可能になります。
それ以外にも、QRコードなどからのデジタルとの連携や、スタッフのおすすめコメントやランキングなど、店舗ならではの人間味を加えることで、消費者との距離感を縮めることもありかもしれません。
また、チラシの「置き場所」によってもその役割は変わります。「入口や売り場」で手に取るチラシは計画的な行動を促し、「会計後」や「買い物カゴ回収場所付近」に置かれるチラシは、また、季節限定の新商品情報や次回使える割引クーポンを添えることで、次回来店へのワクワク感や期待感を高める工夫も考えられます。
このように、店内チラシは情報を伝えるだけでなく、買い物そのものを特別な体験に変えるツールとしての可能性を秘めています。ポジティブな感情を引き出し、効率的な買い物をサポートする内容や見せ方を取り入れることで、計画的な消費行動をサポートし、消費者がストレスなく満足できる買い物体験を提供することが、店舗運営の鍵となるでしょう。

❻ 会計の簡素化や買い物導線の工夫が、新たな価値提案を実現

<Q.あなたが実店舗(実際に品物を並べて売っている店舗)でお買い物をする際に、以下の項目のサービス・仕組みがあったとした際のお気持ちとして当てはまるものを1つずつお選びください。> *[あると嬉しい・役に立つ][どちらかというとあると嬉しい・役に立つ][どちらともいえない][あまり嬉しいとは思わない・役に立つと思わない][嬉しいとは思わない・役に立つと思わない][わからない]の6段階のうち、TOP2のスコア *コロナ禍(2021年6月)、コロナ禍明け(2023年10月) 、2024年4月、2024年11月におけるスコア  *20代~60代 合計スコア

実店舗であったらよいと思うサービス・仕組みについて、データを時系列で見ると、多くの項目でスコアが低下傾向にあります。これは、コロナ禍で高まった「効率化」や「安全性」への意識が、日常生活の正常化に伴ってやや落ち着いてきたことを反映していると考えられます。しかし、依然として「会計時間の簡素化」や「キャッシュレス決済」など、効率性に関連するサービスは高いスコアを維持しており、消費者が効率的な買い物体験を求める姿勢は変わっていません。

一方で、「買い物カゴにモニターを付けた関連品の提案」や「買い物導線の提案」といった項目も一定の支持を得ています。これらは、物価高の中で「無駄を減らし、賢く買い物をしたい」という消費者心理に応えるだけでなく、買い物そのものの楽しさを提供します。効率性と楽しさを両立させるこれらのサービスは、単なる価格競争に留まらない、新しい価値提案を実現する鍵となるのではないでしょうか。

<今回の気付き・ラーニング>

物価高が続く中、消費者の買い物意識や行動には、効率性を求める傾向が明確に表れています。一方で、実店舗での買い物は、ポジティブな感情を引き出す重要な場でもあります。これら二つのニーズを同時に満たすことが、今後の売り場作りや販促活動の鍵となるでしょう。特に、物価高に直面している消費者に対しては、単に価格競争に巻き込まれるのではなく、「効率的な買い物ができる安心感」と「特別感や楽しさ」を提供するバランスが求められます。その中でも消費者のニーズは、物価高や社会の変化に伴い、ますます多様化しています。こうした変化に迅速に対応するためには、消費者の声(VOC)を直接収集・分析し、それを販促活動や売り場作りに反映させることが重要です。
例えば、チラシやプロモーションで何を訴求すればよいかを、アンケートや店頭でのフィードバックから把握し、特に消費者が求める「効率的な買い物情報」(まとめ買いのおすすめ品、購入順序の提案など)を前面に出すことや、店内の買い物導線を顧客属性に合わせて提案するシステムの検討も考えられます。
それ以外にも、VOCデータで収集した商品レビューをリアルタイムで売り場に反映し、「おすすめの声」や「高評価の理由」をデジタル販促物やスキャン端末などで提示することで消費者が他の顧客の声を参考にしながら、より安心して商品を選べる環境を作るといったことも作れるのではないでしょうか。

物価高の状況が長期化する中、短期的な施策だけでなく、持続可能な取り組みを考えることが今後ますます重要になります。消費者の効率性と楽しさを満たす取り組みを続けることで、消費者にとって「選ばれる店舗」になるだけでなく、企業としての競争力を高めることができるでしょう。

物価高を逆風ではなく、新たな価値提案を実現する追い風と捉え、柔軟かつ戦略的に対応していくことが、未来を切り開くカギになるのではないでしょうか。

■調査方法:ウェブ調査
■調査エリア:全国
■調査対象者:20〜69歳男女
■サンプル数:合計500サンプル (20代~60代までの男女各50名)
■調査期間:2024年11月22日(金)~25日(月)
※本情報の引用・転載時には、必ず当社クレジットを明記いただけますようお願い致します。

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