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「AIに聞く」という行為のネーミングについて考えてみた

「AIに聞く」という行為のネーミングについて考えてみた

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「ポケットノート」はその名の通り、 ちょっとした時間に読み切れるコンパクトなコラムです。語感デザイン研究チームのメンバーが身の回りの言葉やコピー事例を取り上げながら、その「読後感」や「語拡設計」にスポットを当て、カジュアルに論じていきます。

「AI に聞く」という行為のネーミングについて考えてみた

おばあちゃんに「AIで聞いたレシピが」と話そうとしたら、「AIって何?」から説明することになりました。急いでいる時ほど、「ググった」みたいにパッと伝わる言葉がほしくなります。

 

私は「AIに聞く」という行為について人に話をする時、「どの言葉を使えばいいんだっけ?」といつも言葉に詰まってしまいます。

最近では若者を中心にChatGPTの愛称「チャッピー」が、2025年の新語・流行語大賞にノミネートされました。このことから、生成AIを使う行為は、多くの人の生活に浸透していることがわかります。

とはいえ、私は「AIに聞く」「AIで調べる」というように、必ず「AI+動詞」でこの行為を表現しています。しかし、どれも何だかしっくりきません。生成AIを使うことが日常的になってきているのに、いつになってもぴったりの言葉がないのです。「ググる」のような簡潔で便利な言葉があったらいいのになあ…。

 

「AIに聞く」という行為を表す造語・愛称について、私たち語感デザイン研究のメンバー内でも話題になりました。すでにネット上でも使われている言葉を調べたり、メンバーが新しい言葉を考案したり予想したりしてみました。

出てきた言葉を整理してみると、興味深い結果になりました。これらのネーミングは、「AIに聞く」という行為を自分の中でどう捉えるかによって、表現の仕方が全く変わっているのです。(図1参照)

図1

例えば「ジピる」「チャピる」は、「ググる」のようにサービス名を動詞化して、既存の検索行為の延長として捉える発想です。「トエ子」は「人工」という漢字がカタカナの「トエ」に見えるという発想から、生成AIを擬人化させたもので、「あいる」は「AI」と動詞の「する」を組み合わせたものを愛称化したものです。どちらも生成AIを身近に感じさせるキャラクター型のネーミングだと考えられます。新語・流行語大賞にノミネートされた「チャッピー」も親しみやすいキャラクター型のネーミングです。

特に意外だったのが、「タプる」「プロる」といった操作方法に着目した造語でした。生成AIという存在そのものではなく、それを使う時の「動作」や「操作感」を言葉にしようという発想。これは新鮮でした。

 

以上のように少し整理しただけでもネーミングの切り口の幅が多く、興味深かったです。

このように、「AIに聞く」という今までになかった行為がユーザーに浸透し、「ネーミングする」「造語にする」という現象が起こることは、私たちが研究している「語感デザイン1.0」の視点では「語拡設計」の「転換」に当たると考えられます。(図2、3参照)

図2

図3

「AIに聞く」という行為を独自に捉え、表現を広げ、転換させていくと、なんだか生成AIとのやり取りがより身近なものに感じられてきませんか?

これからも時代変化や技術の発展によって、様々な場所で新しい言葉が生まれ続けるでしょう。誰かがふと使った表現が、気づけば多くの人に広まり、辞書にも掲載されるような標準語になるかもしれません。こう考えると、私たちは日頃から新しい言葉が生まれる瞬間に立ち会っているんだなと、実感してしまいます。

あなたも独自の新しい言葉・表現を日頃からぜひ考えてみてください。自分独自の行動や思いを表すしっくりくる言葉が、思い浮かんできませんか?

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