LTV時代のリアル小売のイマと販促④【2025-2026年版】プロが教える年末年始商戦の必勝パターン
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- 海蔵寺りかこRikako Kaizouji
- ㈱イトーヨーカ堂にてクッキングサポートコーナー構築やメニュー販促、52週販促計画立案、インストアプロモーションなどに携わったのち、惣菜部シニアマーチャンダイザー着任。㈱ヤオコーでのクッキングサポート担当部長を経て、令和元年 KTMプラニングRとして独立。コンサルティング他、業界誌「ダイヤモンド・チェーンストア」にて話題店調査解説及び「売場づくりと販促の強化書 総菜担当」。
2025年もいよいよ年の瀬を迎えることとなりました。年末商戦は、1年の販売計画においてとても重要な時期であり、お客様との関係を深める大切な機会でもあります。
そんな特別な季節に、お客様を最善の状態でお迎えするためのいくつかのポイントをお伝えします。
「年末は1年間の通信簿」
小売ではよくこの言葉が使われます。
まさしく「そのとおり」です。
年末年始という1年で1番大事なタイミングの食を買う店に選ばれるか、ここが運命の分かれ道です。
この時期のお店選びは、チラシを見た印象でというよりは、この1年間の買物体験の中で出来上がった「自分にあった年末の買物ができる店はココだ!」という経験値や信頼によってなされる、ということです。 そのため、年末年始だけ「いつもより思いきりグレードをあげよう」と唐突なチャレンジをしても、なかなかターゲットとするお客様は来てくれません。普段から自店に来てくださる顧客のニーズにあった品揃えに徹することが重要です。
価値あるものが価値ある状態で並んでいるか
先日、ある小売の惣菜で年末年始に向け「牛すきやき重」を展開したところ、売上に店舗間格差が出たということがありました。あるお店からは「ロスが出るので一旦やめたい」との声も出ました。
そこで、開発担当が各店の商品作りや売り方を見て回ったところ、売れていない店は1番大事な牛肉の上にシールをいくつも貼り肉が見えていなかったり、長ねぎやしいたけなどのおかずの向きがバラバラになっていたりしていました。
一方で売れている店の商品作りはとても丁寧だったそう。そのお店の売場主任に話を聞くと、「価値ある商品なので、スタッフとマニュアルを見ながら作り方を確認しています」とのことでした。
この事例を部門会で共有したところ、各店の商品のクオリティが上がり、売上もアップしました。
こういうやりとりができるのも、ピーク前の今の時期ならでは。
商品動向を単にデータだけで判断せず、現地現物の確認をしつつ商品を育て、年末のピーク時につなげていきましょう。
長い年末年始休暇の食提案
今年は12月26日(金)が仕事納め、1月4日(日)まで9連休という方も多いのではないでしょうか。
なにより、年内の休みが長い。31日の昼まではおおむね日常食ですから、ここの提案はしっかりとしていきたいところです。
また、最近は三が日を休みにする店舗も増えました。となると、4日まで何を食べるか、ここも提案が必要です。乾麺、袋菓子の大袋、牛乳や加工肉のバンドル、冷食ストックといったものをテーマにした「長い休み期間、あったら便利」企画などもお客様に刺さるかもしれません。
31日は他に買うものが多いですから、年始の食はその前段階でまとめ買いさせられたらベスト。どの家庭でも期間内に食べる量はほぼ決まっています。となると、先に買わせたもの勝ちなのです。
一年に一度だから、思い出させてほしい
従来型のおせちの喫食は減少傾向にあるとはいえ、おせち食材を含めた何かしらのごちそうを食べる人は依然として多いでしょう。
ただ、年に1度しか食べないようなものばかりなので、昨年何を食べていたか、これがまた、忘れちゃうんですよ。
「何がいるんだっけ、どう盛り付けるんだっけ…」
おせちにしろ、オードブルにしろ、とにかくパーツが多い。だから何かしらを買い忘れがちです。
私が以前携わっていた「クッキングサポート」では、毎年同じようにおせち見本や作り方リーフレットを出していました。毎年同じような内容にもかかわらず、結構な頻度でお客様は立ち寄られ「これは家にあるかな」「こうやって盛り付ければいいんだ」などと見ていかれたり、リーフレットを手に取ったりするのです。
セット物のおせちを購入しても、ほとんどの場合、それだけで食卓は完結せず、必ず周囲にお雑煮やちょっとしたつまみやデザート、飲み物なども並びます。さらにパーツが増えるんですから、年末年始の食卓には何が必要なのか、今一度思い出させてほしい、というのが消費者の本音でしょう。
たとえば、最近ローストビーフを強化している店も多いですが、パックの中にホースラディッシュが入っても必ず「ホースラディッシュありますか?」とお客様に聞かれますし、関連陳列をすれば多少なりとも商品は動きます。
焼肉提案でも大根おろし、サンチュ、コチュジャンなどプラス1が関連販売されているだけでも気づきになります。
今日私が訪ねたお店では、ビール売場の前に「ウコンの力」が陳列されていました。お客様はそういうお店を「親切な店」と認識します。そして、売上としても、小さなプラス1が「塵も積もれば山となる」わけです。
年が明けたら「早春」
地球温暖化が進む昨今、春の訪れ、そして春商材の収穫時期も早まっています。
品種改良が進み、早生種でさらに早い出荷が可能な商材も増えています。
ですから、春の仕掛けは意識的に早めていくことがポイントです。具体的には、青果や鮮魚部門と春商材の出荷タイミングについて情報交換をする、菓子飲料などで春仕様の新商品の販売スケジュールを確認する、春野菜を使った惣菜を計画的に販売する、などがポイントとなります。
年明け後は消費も気温も冷え込むタイミングです。家計応援的な価格販促はもちろんのことですが、その中でも「春」を表現していくことがお客様への気づきや期待につながり、あと1点の購入を産み出します。
ここ数年は、あらゆるモノの価格が上がり、商品単価アップで売上が支えられたお店も多かったのではないでしょうか。この流れは続くことは間違いないですが、上り幅は鈍化していくことが予想されます。
特に米の価格が下がれば、売上への影響は大きい。そうなると、客数、点数を地道に伸ばしていくしかありません。
まずは年末年始、きめこまかな計画による成功で勢いをつけ、新年につなげていきましょう。